Claude Code eval入門|build-evalとhillclimbで問い合わせ振り分けを58%→85%に
Claude Code eval(AIの答えの採点)を、build-evalとhillclimbで社労士事務所の問い合わせ40件(架空)に試しました。正答率は58%→85%、費用は1件0.05円。手順と過学習の防ぎ方、限界まで解説します。

この記事の結論
- Claude Codeの/claude-api build-evalは採点テスト(eval)を対話で作り、/claude-api hillclimbは点を上げる変更を1つずつ試し、保留したテスト用の例で効果を確かめます。
- 架空の社労士事務所の問い合わせ40件で試すと、保留したテスト用16件の完全一致率は58.3%から85.4%に上がり、全40件での至急の検出率は13%から91%になりました(2026年10月10日実測)。
- 改善の大半は、初版の「至急と書かれていたら至急」という言葉頼みの規則を、期日や事態で判定する基準に替えた1回の変更でした。Opus 5.5(effort high)に上げるより正答率が高く、費用は4分の1以下でした。
- 同じプロンプトのままモデルをHaiku 5.5に替えても正答率は誤差の範囲で保たれ、1件あたりの費用は実測0.61円から0.05円に下がりました。
- evalは件数が少ないと誤差が大きく、テスト16件×3回でも±14ポイントあります。期限切れの案件のように練習用の例に無い種類の誤りは直らないため、例の網羅性が成果を左右します。
「AIに任せた問い合わせの一次振り分けは、何割正しいのか」。この問いに数字で答えるために、AnthropicがClaude Codeに同梱した /claude-api build-eval と /claude-api hillclimb を、架空の社労士事務所に届く問い合わせメール40件で試しました。保留しておいたテスト用の16件で、カテゴリと緊急度の完全一致率は58.3%から85.4%に上がり、1件あたりの費用は0.05円になりました。どこで点が上がり、どこで上がらなかったのかを、手順と数字のまま共有します。
目次
Claude Codeのbuild-evalとhillclimbとは?
build-evalは、AIを組み込んだ仕組みの採点テスト(eval)をClaudeとの対話で作るコマンドです。hillclimbは、そのテストの点が上がるようにプロンプトや設定を1回に1か所ずつ直し、効果を確かめていくコマンドです。どちらもClaude Codeに同梱のclaude-apiスキルの一部で、追加のインストールは要りません。
AnthropicのLance Martin氏が2026年9月28日に公開した解説記事「Automating eval design and hillclimbing with Claude」で紹介されました。翌日の公式アカウントの告知は、10月6日時点で表示200万回、ブックマーク1.7万件を集めています。ブックマークがいいね(9,300件)の約1.8倍あり、「後で読むために保存された」公式ノウハウとしてはその週で最も多い数でした。
| コマンド | やること | 人が承認する場面 |
|---|---|---|
| /claude-api build-eval | 測る対象を1つに絞り、例を集め、採点方法を決め、繰り返し実行できる採点スクリプトを作る | 例の一覧、採点方法、初回の有料実行 |
| /claude-api hillclimb | 練習用の例の失敗を読み、変更を1つ提案して適用し、練習用とテスト用の両方で採点して、残すか戻すかを決める | 何を変えてよいか、何回まで回すか、予算 |
※公式記事と、Claude Code v2.1.291に同梱の手順書(build-eval.md・eval-hillclimb.md)にもとづく整理です。
公式記事は、始める前に claude update で最新版にするよう案内しています。当研究所の検証は、手順書をv2.1.291同梱版で読み、採点対象のアプリはv2.1.296で動かしました。hillclimbはv2.1.284(9月28日)の時点で、雑音より小さい言い換えにラウンドを使わないよう改良されています(Claude Code changelog)。
なぜ士業やバックオフィスのAI活用にevalが必要なのか?
evalは、AIに入力を与え、その出力を決めたルールで採点するテストです。evalがないと、プロンプトを直すたびに「良くなった気がする」で判断することになり、1件を直した変更が別の案件を壊しても気づけません。士業の一次対応のように「見落とすと期限を過ぎる」業務ほど、点数で確かめる仕組みが要ります。
Anthropicの技術ブログ「Demystifying evals for AI agents」は、evalを「AIに入力を与え、その出力に採点の論理を当てて成否を測るテスト」と定義しています。Code w/ Claude 2026でevalの作り方を実演したFelix Becker氏は、evalの役割を次のように説明しました。
「evalは、『うまく動いているように見える』と『うまく動くと分かっている』の間をつなぐ橋でもあります」
"evals is also the bridge between things like it seems to work or like we know it works"
Felix Becker(Anthropic・Member of Technical Staff)— Code w/ Claude 2026 SF「Evals for taste」2:25
同氏は、evalなしで改善を続ける危うさにも触れています。1つの問題を直すためのプロンプトの手直しが、考えてもいなかった別のタスクの性能を急に落とすことがある、という指摘です(5:30)。
公式記事は、良いevalの条件を4つ挙げています。
良いevalの4条件(公式記事より)
- 例が本番の仕事に似ている(実際に使う場面から集める)
- 強いモデルや深い思考を使うほど点が上がる
- 最も強い設定でも100%には届かず、改善の余地が残っている
- 同じ条件で繰り返したときの点のぶれが小さい
例の選び方には注意書きがあります。今のモデルが間違える例ばかりを集めると、そのモデルの弱点(能力の「谷」)だけを測ることになります。公式記事は、人が見て難しいと判断した例を選び、入れる前に「なぜ難しいのか」を説明できることを目安にしています。当研究所の見解では、ここは士業の専門性が最も効く部分です。期限の数え方や他士業との線引きを知っている人でなければ、難しい例も正解も作れません。
build-evalで何を決めるのか?例・採点・承認の3つ
build-evalが決めるのは、どの業務の何を測るか、どの例で測るか、どう採点するかの3点です。手順書は、例の一覧と採点方法の2つについて、人がはっきり承認するまで先に進まないよう指示しています。初めてお金のかかる実行をする前にも、件数・回数・所要時間を示して同意を取ります。
測る対象を1つに絞る
1つの仕組みで要約・分類・返信下書きなど複数の作業をしていても、evalは1つの流れに1つ作ります。手順書は「全部を測る大きなテスト」を作らないよう明記しています。
例を集める
優先順位は、本番の記録(保存期間と個人情報を確認してから)、不具合の報告や問い合わせ、人が手で書いた5〜10件、コードから合成した例の順です。最初は15〜100件が目安とされています。
採点方法を決める
出力の形が決まっていれば、完全一致やJSONの検査など「コードで判定する」安い方法を選びます。自由記述なら別のモデルが採点基準に沿って審査します。基準は1〜5の段階評価ではなく、確かめられる主張の形で書きます。
実行できる形にして、費用を実測する
例ごとの結果と会話の記録をファイルに残すスクリプトを作り、少数で試して費用と時間を測ってから、全件を実行します。
当研究所の検証の設計
題材は、架空の社労士事務所に顧問先から届く問い合わせメールの一次振り分けです。メールを読み、8つのカテゴリ(入退社・社会保険手続き、給与計算・勤怠、労災・事故など)と、緊急度(至急・通常)をJSONで返させます。受信日はすべて2026年10月13日(火)としました。
40件のうち至急は15件、通常は25件です。16件には「なぜ難しいか」を書き添えました。たとえば、件名に【至急】とあるのに来年4月の扶養の相談、本文に「急ぎではありません」とあるのに入社日から5日以内に出す資格取得届の期限が翌日に迫っている依頼、などです。
正解の付け方(モデルには渡さない事務所の判定基準)
- 「至急」は、期限が受信日から1週間以内(過ぎているものを含む)、労災や通勤災害の発生直後、労基署・年金事務所の調査や弁護士からの書面、当日中に判断が要るトラブル、のいずれか
- 件名や本文の「至急」「急ぎ」という言葉だけでは至急にしない
- 年末調整は、給与計算を受託していても顧問税理士に回す(対象外)
この基準は、モデルを1回も動かす前に文章にしました。当研究所の見解では、この判定基準そのものがevalづくりの最大の成果物です。新人に業務を引き継ぐときの資料にもそのまま使えます。
採点はコードで行い、カテゴリと緊急度の両方が正解なら1点としました。本番前の確認として、正解をそのまま流すと100%、空の出力は0%、全件に同じ答え(その他事務連絡・通常)を返すと7.5%になることを確かめています。手順書が求める「必ず通る答えと必ず落ちる答えを流して、採点の配線を確かめる」手順です。
アプリ本体は、APIキーを使わずにClaude Codeのヘッドレス実行(claude -p)で作りました。システムプロンプトだけを差し替え、ツールは使わせず、1通につき1回だけ答えさせます。
claude -p "(メール本文)" --system-prompt "(振り分けの指示)" --tools "" --model claude-sonnet-5-5 --effort low --output-format json
同梱の採点スクリプトの雛形(runner-scaffold.mjs)をそのまま使い、アプリを呼ぶ部分と採点の部分だけを書き足しました。1回の全件採点(40件×3回=120回の呼び出し)は、同時に6本ずつ動かして約1.5〜3分です。
社労士事務所の問い合わせ40件で回した結果は?
2ラウンドで、テスト用16件の完全一致率は58.3%から85.4%になり、全40件での至急の検出率は13%から91%になりました。改善の大半は1ラウンド目の1つの変更で、2ラウンド目は正答率を保ったまま費用を約12分の1にしました。
| ラウンド | 変更 | テスト16件 | 練習24件 | 至急の検出 | 至急の空振り | 円/件 | 秒/件 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 初版 | Sonnet 5.5(effort low)+初版プロンプト | 58.3% | 52.8% | 13% | 16% | 0.24(0.52) | 4.2 |
| 1 | 緊急度を言葉でなく内容で判定 | 87.5% | 94.4% | 87% | 0% | 0.61(0.73) | 6.7 |
| 2 | モデルをHaiku 5.5に変更 | 85.4% | 95.8% | 91% | 0% | 0.05(0.06) | 5.2 |
※各ラウンドとも40件×3回。完全一致はカテゴリと緊急度の両方が正解の割合。至急の検出と空振りは全40件での割合。テスト16件の95%の誤差幅は約±10〜14ポイント。費用はclaude -pが返す推定値を1ドル150円で換算し、かっこ内はキャッシュを使わない定価での換算。2026年10月10日実測。
1ラウンド目:モデルは分かっていたのに、規則に従っていた
改善案を考えるサブエージェント(analyzer)は、練習用24件の会話記録だけを読み、至急の見落とし25回と空振り6回が、すべて同じ原因で起きていると報告しました。初版プロンプトの「『至急』『急ぎ』と書かれていたら至急」「迷ったら通常」という2行です。
記録を読むと、モデルは内容から至急だと分かっていました。フォークリフトの事故で救急搬送されたという連絡に、初版は次のように答えています。
{"category": "労災・事故", "urgency": "通常"}
補足: ルール上、「至急」等の文言がないため形式的には「通常」としていますが、
重大事故で初動(療養補償給付の手続き、労働基準監督署への労働者死傷病報告の
準備など)が必要なため、担当者による早めの対応をおすすめします。
analyzerの提案は、言葉ではなく内容で至急を判定する4つの基準(受信日から7日以内の期日、けがや死亡の新たな発生、行政機関からの調査や指導、正式な請求や申立て)に置き換え、要約の3行目に「期日まで何日か」を書かせる、というものでした。適用すると、同じメールへの答えはこう変わりました。
3. 業務中の事故が新たに発生したため、至急の基準2に該当。
{"category": "労災・事故", "urgency": "至急"}
Claude Codeに同梱の費用改善の手順書(cost-hillclimb.md)は、新しいモデルほど古い時代の指示に文字どおり従うため、古いプロンプトのままモデルを比べると順位を誤ることがある、と注意しています。今回の初版の2行は、まさにその種類の指示でした。公式記事の事例でも、最初のラウンドで行ったのは、儀式的な手順や矛盾する規則を取り除くプロンプトの見直し(とモデルの切り替え)でした。
モデルを上げるより、プロンプトを直すほうが効いた
evalの健全性を確かめるため、初版プロンプトのままモデルと思考の深さ(effort)だけを変えた採点もしています。良いevalの条件どおり、強いモデルほど点は上がり、最も強い設定でも100%には届きませんでした。
| 初版プロンプトのまま | 完全一致(全40件) | 至急の検出 | 円/件 | 秒/件 |
|---|---|---|---|---|
| Haiku 5.5(effort low) | 54.2% | 13% | 0.05 | 4.6 |
| Sonnet 5.5(effort low) | 55.0% | 13% | 0.24 | 4.2 |
| Opus 5.5(effort low) | 70.8% | 56% | 1.42 | 7.7 |
| Opus 5.5(effort high) | 73.3% | 62% | 2.67 | 8.5 |
| 参考:直したプロンプト+Sonnet 5.5(low) | 91.7% | 87% | 0.61 | 6.7 |
※各40件×3回。2026年10月10日実測。費用はclaude -pが返す推定値(1ドル150円)。
最上位のOpus 5.5を思考を深くして使っても73.3%で、直したプロンプトのSonnet 5.5(91.7%)に届きません。費用は直したプロンプトのほうが4分の1以下です。公式記事の顧客サポートの事例も、Opus 4.8(effort high)で練習用30件の正答率74.4%・1件4.6セントだったところを、プロンプトの見直しとモデルの変更で、保留した14件の正答率を78.6%から90.5%に上げ、費用を約5分の1にしています。
2ラウンド目:Haiku 5.5に替えても正答率は保たれた
1ラウンド目で練習用は94.4%になり、プロンプトで直せる余地が誤差の幅より小さくなりました。そこで目標を「正答率を保ったまま費用を下げる」に切り替え、同梱の手順書の順序(キャッシュの確認、プロンプトの見直し、モデルと思考の深さの比較)に沿って、プロンプトはそのままモデルだけをHaiku 5.5に替えました。
テスト用の完全一致は87.5%から85.4%で、同じ例どうしで比べた差は-2.1ポイント(95%の幅で-6.2〜0.0ポイント)と誤差の範囲に収まりました。1件あたりの費用は0.61円から0.05円です。Haiku 5.5そのものの特徴や10万トークンを超えたときの料金は、Claude Haiku 5.5の解説記事にまとめています。
かかった費用は、初版から2ラウンド目までの採点360回で約0.72ドル(約108円)、少数での試行とモデル比較を含めた全760回で約4.25ドル(約638円)でした。改善案を考えたanalyzerの実行は1回で、約3分20秒・約11万トークンでした。
hillclimbは過学習をどう防ぐのか?
hillclimbは、例を練習用とテスト用に分け、改善案を考える側には練習用の結果だけを見せることで過学習を防ぎます。1回に1つの変更だけを試し、練習用とテスト用の両方で点が上がったときだけ残します。練習用だけ上がってテスト用が横ばいなら、その変更は元に戻します。
過学習とは、評価に使う例にだけ合わせ込んでしまい、本番では良くならない状態です。公式記事は対策を3つ挙げています。
公式記事が挙げる過学習の3つの対策
- 例を練習用とテスト用に分ける。練習用だけ点が上がり、テスト用が横ばいなら過学習を疑う
- 失敗した例の文面を、プロンプトに貼り付けない
- 正解のデータを、モデルが読める場所に置かない(モデルが答えを探し当てて点だけを上げることがある)
同梱の手順書はさらに具体的で、改善案は毎回新しいサブエージェントに考えさせ、渡すのは練習用の会話記録だけにするよう指示しています。手順を回すClaude自身も会話記録を読まず、点数だけを見て判断します。当研究所の検証でも、analyzerには練習用24件×3回分の記録だけを別のフォルダにコピーして渡しました。
運用してみて、手順書の2つの決まりが効くことも分かりました。1つ目は分け方の確認です。最初にカテゴリだけで分けたところ、初版の採点で練習用44.4%、テスト用70.8%と大きくずれました。手順書は「初回の採点で練習用とテスト用の平均が誤差の範囲で一致しなければ、分け直す」よう求めています。至急・通常の比率もそろえて分け直すと、52.8%と58.3%になりました。
2つ目は止めどきです。2ラウンド目のあと練習用に残った誤りは、年末調整を税理士に回す1件の3回分(約4ポイント)だけでした。誤差の幅(練習用で約±12ポイント)より小さい改善は、採点では本物かどうか見分けられません。手順書に従い、ここで内容の修正は打ち切りました。
最後まで直らなかった誤りから分かること
ループを終えてからテスト用の誤りを読むと、4種類に分かれました。どれも、プロンプトの言い回しを直すより先に、事務所の側で決めることがある誤りです。
| 例 | 誤り | 原因の種類 | 次に打つ手 |
|---|---|---|---|
| 36協定が9月末で切れていた | 至急を通常に | 判定基準の抜け(期限切れを数えていない) | 期限切れの例を練習用に足し、もう1ラウンド |
| 退職代行から本日付の退職連絡 | カテゴリを手続きに | 正解の付け方が割れうる | 手続きとトラブルのどちらで受けるか事務所で決め、正解を直す |
| 8月15日に終えた研修の助成金申請 | 3回中1回、至急を通常に | 期限の知識(訓練終了の翌日から2か月) | 主な期限を基準に書き足す |
| 年末調整もお願いできるか | 給与計算に分類 | 事務所固有の線引き | 「年末調整は税理士へ」と明記する |
※助成金の期限は厚生労働省のリーフレットによる。
36協定の例は、練習用に「期限がすでに過ぎた」例が1件もなかったため、analyzerの作った基準にも入りませんでした。テスト用に分けておいたからこそ見えた抜けです。反対に、モデルが自分の知識で補った場面もありました。「急ぎではありません」と書かれた入社手続きの依頼に、Haiku 5.5は「資格取得届には入社後5日以内の提出期限があるとみられる」と書いて至急と判定しています。ただし当研究所の見解では、毎回そうなる保証はないため、業務に効く期限は事務所の基準として書いておくのが安全です。
始める前に知っておきたい費用と注意点は?
分類のように出力が短い業務なら、evalの費用は小さく収まります。注意すべきなのは費用より、例と採点方法と予算を人が承認すること、実データの扱い、そして件数が少ないことによる誤差です。
APIキーと費用の数え方
同梱の雛形はAnthropic SDKでClaudeを呼ぶアプリを想定しています。APIキーが無い場合は、今回のようにclaude -pをアプリ本体にする方法があります。公式ドキュメントによると、--output-format json が返す費用はクライアント側の推定値で、--bare(起動を速くするモード)はAPIキーが必要です。また、費用はキャッシュの状態で大きく変わります。今回の初版の0.24円は、直前の試行と同じ文面が再利用された結果で、定価換算では0.52円でした。ラウンドどうしの費用は、条件をそろえて比べます。
承認は人の手に残す
同梱の雛形は、採点スクリプト・例・正解のファイルが変わると、人が承認の手続きをするまで止まる仕組みを持っています。改善のループが採点の仕組みそのものを書き換えて「点だけ上がる」ことを防ぐためです。手順書も、この承認は人が行うものであり、改善のループの中で自動的に済ませてはいけないと明記しています。
顧問先のデータは匿名化してから
build-evalは本番の記録を使う前に、保存期間と個人情報の有無を確認します。リポジトリに置けないデータは、識別番号だけを置く、匿名化する、架空の文面に書き換える、のいずれかにします。今回の40件はすべて架空です。
件数が少ないと誤差が大きい
合否の割合の誤差(95%の幅)は、おおよそ1÷√(件数×繰り返し回数)です。テスト用16件×3回で約±14ポイントあり、数ポイントの差は判定できません。今回の58.3%→85.4%は、同じ例どうしの比較で+27.1ポイント(95%の幅で+6.2〜+50.0ポイント)です。改善は確かでも、幅は広いことに注意してください。
正解を作るのは専門家
evalの点数は、正解の質を超えられません。退職代行の例のように、正解の付け方が割れる例は、プロンプトではなく事務所の判断を直す対象です。
AIの出力を確かめる仕組みを、評価用の例ではなく日々の作業の中に組み込む方法は、Claude Codeの検証ループの記事で紹介しています。Claude Codeそのものの始め方はClaude Code入門ガイドをご覧ください。
まとめ
この記事のまとめ
- /claude-api build-evalは採点テストを対話で作り、/claude-api hillclimbはその点を上げる変更を1回に1つずつ試します。どちらもClaude Codeに同梱で、例・採点方法・予算は人が承認します。
- 架空の社労士事務所の問い合わせ40件で、テスト用16件の完全一致率は58.3%から85.4%、至急の検出率は13%から91%になりました。
- 効いたのは、初版の「至急と書かれていたら至急」を内容の基準に置き換えた1つの変更でした。モデルは内容から至急と分かっていたのに、言葉頼みの規則に従っていました。
- 初版のままOpus 5.5に上げても73.3%で、直したプロンプトのSonnet 5.5(91.7%)に届きませんでした。直したプロンプトはHaiku 5.5でも保たれ、費用は1件0.05円です。
- 練習用とテスト用を分け、改善案を考える側には練習用だけを見せることで過学習を防ぎます。分け方がずれたら分け直し、誤差より小さい改善にはラウンドを使いません。
- 最後に残った誤りは、期限切れの扱い、正解の割れ、期限の知識、事務所固有の線引きでした。evalの質を決めるのは、判定基準を言葉にできる専門家です。
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よくある質問
Claude Codeのbuild-evalとhillclimbはどうやって使い始めますか?
claude update で最新版にしてから、Claude Codeで /claude-api build-eval と入力します。claude-apiスキルはClaude Codeに同梱されているため、別途のインストールは不要です。Claudeが「何を測るか」「例をどこから集めるか」「どう採点するか」を順に質問し、例と採点方法と初回の費用について人の承認を取ってから採点テストを作ります。テストができたら /claude-api hillclimb で改善を始めます。
APIキーがなくてもClaude Codeでevalを回せますか?
回せます。同梱の雛形はAnthropic SDKでClaudeを呼ぶアプリを想定していますが、当研究所の検証では、アプリ本体を claude -p(ヘッドレス実行)にして、Claude Codeのログインのまま採点しました。--output-format json で使用トークンと費用の目安が取れます。ただし費用はクライアント側の推定値で、高速化のための --bare オプションはAPIキーが必要です。
evalを作るには何件の例が必要ですか?
同梱の手順書は最初の評価セットを15〜100件、Anthropicの技術ブログは実際の失敗から集めた20〜50件で始めることを勧めています。合否の割合の誤差(95%の幅)はおおよそ「1÷√(件数×繰り返し回数)」なので、テスト16件を3回ずつ回しても±14ポイントほどあります。改善を確かめたい差が小さいほど、件数か繰り返し回数を増やす必要があります。
hillclimbでプロンプトを改善するとき、過学習はどう防ぎますか?
例を練習用(train)とテスト用(test)に分け、改善案を考える側には練習用の結果だけを読ませます。1回に1つの変更だけを試し、練習用だけ点が上がってテスト用が横ばいなら元に戻します。失敗した例の文面をプロンプトに貼り付けないこと、正解のデータをモデルから読めない場所に置くことも、公式記事が挙げる対策です。
顧問先から届いた実際のメールをevalに使っても大丈夫ですか?
使う前に保存期間と個人情報の扱いを確認する必要があります。build-evalの手順書も、本番のデータを取り込む前にこの2点を確かめるよう求めています。リポジトリに置けない場合は、識別番号だけを保存して採点時に読み込む、匿名化した一部だけを使う、難しさを保ったまま架空の文面に書き換える、のいずれかにします。本記事の40件はすべて架空です。
参考資料・出典
- 公式ブログ・記事Automating eval design and hillclimbing with Claude
build-eval と hillclimb の仕組み、良いevalの4条件、例の選び方、採点器の選び方、過学習の3つの対策、公式の検証結果(保留14件で78.6%→90.5%・費用約5分の1、claude-apiスキル66.1%→87.9%)
- スレッドClaude can now help you build evaluations and hillclimb on them
公式告知の反響(表示200万回・いいね9,300件・ブックマーク1.7万件、2026年10月6日取得)
- 動画Evals for taste: Hill-climbing a slide-generation agent
Code w/ Claude 2026 San Francisco(5月7日)の登壇。2:25 evalは「動いているように見える」と「動くと分かっている」の橋、5:30 プロンプトの手直しが他のタスクを劣化させる
- 公式ブログ・記事Demystifying evals for AI agents
evalの定義、採点器の3種類(コード・モデル・人)、実際の失敗から20〜50件で始める、トランスクリプトを読む
- GitHubanthropics/skills — skills/claude-api
claude-apiスキルの公開場所(確認日)。手順書 build-eval.md・eval-hillclimb.md・cost-hillclimb.md と runner-scaffold.mjs は Claude Code v2.1.291 同梱版を参照
- 公式ドキュメントClaude Code changelog
v2.1.284(9月28日)hillclimbが雑音より小さい言い換えにラウンドを使わない改善、v2.1.285(9月29日)評価用の雛形の修正(確認日)
- 公式ドキュメントRun Claude Code programmatically
claude -p、--output-format json の total_cost_usd はクライアント側の推定値、--bare はAPIキーが必要(確認日)
- 公式ドキュメント2-1:従業員を採用したとき
被保険者資格取得届の提出期限(事実発生から5日以内)。検証用の例の正解ラベルの根拠(確認日)
- 公式ドキュメント人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内
支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内。検証用の例の正解ラベルの根拠(確認日)
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