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Claude Codeにレビューさせるなら別の会話で?Google発EGM(象と金魚)を設計書で実測

Claude Codeにレビューさせるとき、同じ会話と前提を知らないAIで何が違うのか。Googleが公開したEGMの仕組みと使い方を一次資料で整理し、欠陥10個を仕込んだ税理士事務所の設計書で4方式を実測しました。

Claude Codeにレビューさせるなら別の会話で?Google発EGM(象と金魚)を設計書で実測

この記事の結論

  • EGM(Elephant-Goldfish Model)は、Googleが2026年10月27日にv0.1.0を公開したClaude Code等のプラグインで、経緯を知るAIが書き、会話履歴のないAIが見直します。
  • 当研究所が税理士事務所の設計書に欠陥10個を仕込んで実測すると、ヒアリングを会話に持つ同じセッションの見直しは9.5〜10点、前提を知らない新しい会話は7点でした(Sonnet 5.5)。
  • 前提を知らないAIは、紙の帳簿の2社や所長の承認といった会話の中にしかない事情を一度も指摘できない一方、守秘義務や「11月分」の意味など、初めて読む人がつまずく点を拾いました。
  • 参照先のCSVとひな形を実際に開いたのはEGMのレビュアーと、「参照先を必ず開く」と1行足した自作サブエージェントだけで、開いた回だけがひな形の不在とCSV形式の違いを指摘しました。
  • EGMの5段階レビューは今回1回あたり約0.82ドル・約4分で、新しい会話での見直しの約14倍の費用でした。小さく明確な修正には向かないと、EGM自身のFAQも書いています。

AnthropicのClaude Codeに書類や設計書を作らせたあと、「見直して」と頼むのは同じ会話でいいのか。それとも、経緯を知らない別のAIに読ませるべきか。Googleが2026年10月27日に公開したEGM(Elephant-Goldfish Model)は、後者を仕組みにしたClaude Code用のプラグインです。この記事では、一次資料で仕組みと使い方を整理したうえで、欠陥を10個仕込んだ税理士事務所の設計書を4つの方法でレビューさせ、点数・費用・時間を実測しました。結果は「別の会話なら勝ち」という単純な話ではありませんでした。

目次

  1. EGM(Elephant-Goldfish Model)とは?Googleが公開したClaude Code用プラグイン
  2. なぜ「前提を知らないAI」にレビューさせるのか?
  3. Claude CodeでEGMを使う方法(インストールと実行)
  4. 実測:税理士事務所の設計書を4つの方法でレビューさせた
  5. 「知っているAI」と「知らないAI」は何が違ったのか?
  6. EGMなしで「金魚レビュー」を始めるには?
  7. EGMの費用と注意点、向かない場面は?
  8. まとめ
  9. よくある質問
  10. 参考資料・出典

EGM(Elephant-Goldfish Model)とは?Googleが公開したClaude Code用プラグイン

EGMは、プロジェクトの経緯を覚えているAI(象)に設計書を書かせ、会話履歴を持たない新しいAI(金魚)に見直させる手法と、それを実装したオープンソースのプラグインです。GoogleがGitHubでApache 2.0として公開し、v0.1.0は2026年10月27日に出ました。Claude Code・OpenAI Codex・Google Antigravityで動きます。

名前は「象は忘れない」「金魚はすぐ忘れる」という英語の言い回しから来ています。READMEは3つの役割を次のように分けています。

役割持っている文脈仕事
象(Elephant)プロジェクト、要件、これまでの決定問題を掘り下げ、仕様を書く
金魚(Goldfish)文書と、文書が参照する資料だけ。それまでの会話は持たない書かれていない前提、曖昧な要件、実装上のリスクを探す
あなた目標と、譲れない制約トレードオフを決め、設計を承認し、何を作るかを決める

※ google/elephant-goldfish-model の README「How it works」を当研究所が訳したもの(2026年10月29日確認)

READMEとegm.devは「数千人のGoogleのエンジニアが使っている」と説明しています。これはGoogle自身の説明で、第三者が確かめた数字ではありません。どちらにも「This is not an officially supported Google product.」(Googleが正式にサポートする製品ではない)と明記されています。公開直後の10月29日時点で、GitHubのスターは約4,800件でした。海外では、AI LABSの解説動画「EGM: Google's New Way To Use Claude Code Is Insane」(10月25日)が約16万回再生されています。

プラグインには7つのスキルがあります。アイデアを詰める brainstorm、設計書を書く draft、レビュー結果に対応する resolve、既存コードの説明文書を作る bootstrap、設計書を5段階で見直す review、レビュアーを組み合わせて回す review-loop、実装と設計書のずれを調べる drift-report です。中心は review で、次の5段階を順番に回します。

1

Zoom Out(全体を引いて見る)

目的に対して設計が複雑すぎないか、本当の問題を解いているかを、全体を引いた目線で見ます。

2

Comprehension(読解テスト)

初めて読む人として、文書の言い換えを書きます。うまく言い換えられない箇所が欠陥になります。

3

Critic(批評)

設計・構成・文体の3つの観点から、それぞれ別のレビュアーが指摘します。

4

Intermediate Zoom Out(もう一度引いて見る)

それまでの指摘で設計が重くなりすぎていないかを確かめます。

5

Implementation Readiness(実装準備の確認)

この文書だけで迷わず実装できるかを確かめます。実際のファイルとの突き合わせも、この段階で行います。

なぜ「前提を知らないAI」にレビューさせるのか?

経緯を知っているAIは、文書に書いていないことまで「分かっている」ので、文書の抜けに気づきにくいからです。提唱者のDave Rensin氏は、文書と参照ファイルだけで説明できなければ、その文書は文脈が足りないと述べています。設計書を後で読むのは、経緯を知らない人です。だから見直しも、経緯を知らない読み手にさせる、という考え方です。

Rensin氏は2026年4月28日のエッセイ「Elephants, Goldfish and the New Golden Age of Software Engineering」でこの手法を説明しています。10月21日の追記では、自身のチームが社内で使ってきたプラグインのオープンソース化をGoogleが認めた、と書いています。エッセイが定義する金魚は次のとおりです。

「まったく新しい、記憶ゼロのAIセッション。目の前に置かれたものしか知らない」

"A brand new, completely fresh AI session with zero memory. It only knows exactly what is put right in front of it."

Dave Rensin(Google)— Elephants, Goldfish and the New Golden Age of Software Engineering(2026年4月28日)

手順はこうです。まず金魚に「この文書と参照ファイルを読んで、何をしようとしているか説明して」と頼みます(Comprehension Test)。次に別の金魚に、見落とし・誤った前提・考え漏れを挙げさせます(Critic Review)。Rensin氏は、この批評のうち「体感では約30%が非常に価値がある」とし、それで十分に元が取れると書いています。逆に言えば、残りの約7割は採用しない前提の指摘です。

「金魚が、その文書と参照ファイルだけからシステムを説明できないなら、文書に文脈が足りていない」

"If the Goldfish cannot explain your system based only on that document and the files it references, your doc is missing context."

Dave Rensin(Google)— 同エッセイ「Step 5: The Comprehension Test」

Claude Codeでは、この金魚をサブエージェントで作ります。公式ドキュメントによれば、サブエージェントは新しい独立したコンテキストで始まり、本体の会話履歴も、すでに読んだファイルも見ません。EGMのレビュアーはさらに、ツールを読み取り専用(Read・Grep・Glob)に絞り、omitClaudeMd という設定でCLAUDE.md(プロジェクトの指示ファイル)も読ませません。omitClaudeMdはClaude Code v2.1.271以降で使える設定で、EGMがv2.1.271以降を求めるのはこのためです。

Claude CodeのEGMで、ヒアリングの記録を抱えた象が設計書を書き、別の金魚鉢の中の金魚がその設計書だけを読んでレビューする様子
象は経緯を覚えたまま書き、金魚は文書だけを読んで見直す(イメージ)

Claude CodeでEGMを使う方法(インストールと実行)

Claude CodeでEGMを使うには、ターミナルでマーケットプレイスを追加してプラグインを入れ、新しいセッションで /egm: を付けたコマンドを呼びます。必要なのはClaude Code v2.1.271以降です。EGMの検証記録では、Claude Code 2.1.308(10月22日)で設計からレビューまでの一連の流れが動作確認されています(レビューは修正後に合格)。当研究所はv2.1.312で試しました。

ターミナル(インストール)
claude plugin marketplace add google/elephant-goldfish-model
claude plugin install egm@egm

インストール後に新しいセッションを開き、次のように呼びます。Claude Codeでは、スキル名の前に /egm: が付きます。

Claude Code の入力欄
/egm:egm-brainstorm 顧問先の月次報告書を自動で作る仕組みを考えたい
/egm:egm-draft
/egm:egm-review design_draft.md

review を呼ぶと、追加で読ませる資料の有無と、実行の仕方を聞かれます。実行の仕方は4つです。段階ごとに止まって確認する方法、止まらずに最後の統合レポートまで出す方法、仕様の部分だけを見る方法、実装計画だけを見る方法があります。指摘への対応は resolve が受け持ち、どれを採用するかを1件ずつ決めていきます。

試すだけなら --plugin-dir

リポジトリを手元に置き、claude --plugin-dir で読み込むと、そのセッションにだけ有効になります(公式のプラグイン読み込みの説明)。当研究所の検証もこの方法です。

「Default agents/ folder is ignored」は気にしなくてよい

claude plugin list や /plugin のエラー欄にこの注意が出ますが、EGMのClaude Code向けの説明によれば想定どおりです。当研究所の環境でも表示されました。

レビュアーがプラグインのファイルを読む許可

レビュアーは、プラグインの中にある観点の説明書を読みながら作業します。対話で使うときは、普段の読み取り許可の確認で承認します。claude -p のように確認画面のない実行では、プラグインの agents・docs・resources・skills フォルダへの Read 許可を、権限設定で個別に与えるよう案内されています。権限確認そのものを切る設定は勧められていません。

実測:税理士事務所の設計書を4つの方法でレビューさせた

45行の設計書に欠陥を10個仕込み、Claude Code(Sonnet 5.5)に4つの方法で見直させました。結果は、ヒアリング内容を会話に持つ同じセッションが9.5〜10点、前提を知らない新しい会話が7点、自作の金魚サブエージェントが6.5〜8点、EGMが10点(金魚の指摘だけなら8点)でした。費用はEGMだけが1桁多くかかりました。

題材は架空の「田中会計事務所」が、顧問先20社の月次報告書をClaude Codeで自動作成するための設計書です。作業フォルダには、設計書のほかに会計ソフトのサンプルCSVを2つ(freee形式と弥生形式)と、月次報告のひな形を置きました。所長へのヒアリングメモは作業フォルダに置かず、「象」役のセッションにだけ会話の中で読ませています。仕込んだ欠陥は次の10個です。

#仕込んだ欠陥どこを見れば分かるか
1摘要欄のマイナンバーなどを消す工程がないヒアリングだけ
2会計ソフトが2種類あり、CSVの形式が違うヒアリング、またはCSVを開く
3紙の帳簿の2社にはCSVがなく、入力も遅れるヒアリングだけ
4前月データがない社、決算月が違う社があるヒアリング、または文書から推測
5送付前に確認するのは所長(設計書は「担当者」)ヒアリングだけ
6「自動送付」と「確認後に送付」が矛盾文書だけで分かる
7設計書が指すひな形ファイルが実在しないtemplates フォルダを開く
8「エラーなら最初からやり直す」で二重送付になる文書だけで分かる
9完了の基準と検証方法がない文書だけで分かる
10集計をAIに直接させ、数字の検算がない文書だけで分かる

比べた方法は次の5通りで、合計10回実行しました。依頼文は「来月から実装担当者に渡す設計書です。実装前に直すべき問題点を、重要な順にすべて挙げてください」で、方法ごとに必要な部分だけを変えています。判定は当研究所が各回の回答全文を読み、具体的に指摘していれば1点、一般論として近い指摘なら0.5点としました。

方法回数点数(10点満点)費用(1回)時間
A. 同じ会話で見直す(象。ヒアリングを読んだ直後)39.5〜10約0.04ドル(約6〜7円)32〜39秒
B. 新しい会話で見直す(設計書だけ)27約0.06ドル(約9〜10円)31〜32秒
C. 象から自作の金魚サブエージェントに頼む26.5〜7約0.08ドル(約13〜14円)41〜45秒
C'. Cの定義に「参照先を必ず開く」を1行足す27.5〜8約0.09〜0.10ドル(約14〜16円)46〜52秒
D. EGM(/egm:egm-review、止まらずに最後まで)110(金魚の指摘だけなら8)約0.82ドル(約128円)3分54秒

※ 2026年10月29日、Claude Code v2.1.312・Sonnet 5.5(effort既定)・claude -p で実測。費用は出力される total_cost_usd(APIの定価換算、サブエージェント分を含む)で、A・C・Dは最初にヒアリングを読ませる工程(約0.03ドル)を除いたレビュー工程の分。1ドル=157円で換算。ProやMaxでは利用枠の消費として効く

Aでは、ヒアリングを読ませた依頼と、観点を細かく指定した依頼の両方を試しましたが、どちらも9.5〜10点で差はほぼありませんでした。EGMは9体のサブエージェントを起動し、5段階を順番に回してから統合レポートを書きました。Dの10点のうち、欠陥1・3・5の具体的な指摘は、最後に象がヒアリングと照合した表から来ています。この表には「レビュアーの指摘ではない」と明記されていました。

「知っているAI」と「知らないAI」は何が違ったのか?

見つけたものの種類が違いました。経緯を知るAIは、会話の中にある要件との食い違いに強く、知らないAIは、初めて読む人がつまずく点に強かったのです。そして、文書が指すファイルを実際に開いたレビュアーだけが、ファイルの中身から分かる欠陥を見つけました。「別の会話で見直せば上」という単純な結果にはなりませんでした。

金魚は「会話の中にしかない事情」を指摘できない

新しい会話と金魚サブエージェントは、EGMの9体のレビュアーを含めて、どの回でも「紙の帳簿の2社にはCSVがない」(欠陥3)を挙げませんでした。設計書にもフォルダにも手がかりがないので、知りようがないからです。「確認するのは所長」(欠陥5)も、「確認と承認を誰がするか書かれていない」という一般論にとどまりました。金魚の沈黙は、文書が正しい証拠ではありません。文書に書かれていない前提が、そのまま残っているという意味です。

面白かったのは、象と金魚を同じ画面で組み合わせたCの1回目です。象は、金魚の結果をそのまま貼ったあとで、「このレビューにはヒアリングメモの点(マイナンバー、紙の帳簿の2社、所長の事前確認、二重送付の心配)に触れた指摘がありません。サブエージェントは会話の経緯を知らないためです」と、自分から書き足しました。EGMの統合レポートが、ヒアリングとの照合を別表にしていたのと同じ考え方です。

金魚だけが拾ったもの

逆に、新しい会話と金魚は、象の一部の回が挙げなかった点を指摘しました。たとえば、顧問先の財務データを外部のAIサービスに渡すときの守秘義務や、利用設定の確認です。「11月分」が11月に作る報告なのか11月の実績なのか、担当と保守の体制、顧問先名にファイル名で使えない文字が入る場合の扱いも挙がりました。どれも、経緯を知る人なら「言わなくても分かる」点です。しかし、設計書を受け取る新人にとっては分かりません。

参照先を開いたレビュアーだけが、ファイルの中の欠陥を見つけた

A・B・Cの7回は、ログ上で設計書しか開いていませんでした。CSVもひな形も開かなかったので、ひな形の不在には「実在するか不明」と書くのが精一杯でした。EGMでは、実装準備を見るレビュアーが作業フォルダを調べ、CSVとひな形を開きました。そのうえで「設計書が指すひな形は存在せず、あるのは 月次報告_ひな形.md だけ」と指摘しました。CSVについても、freeeは単式、弥生は借方・貸方の複式で形式が違うことを見つけています。事業主貸(店主の生活費)を経費に入れてはいけないことや、弥生の借方と貸方をそのまま足すと二重に数えてしまうことまで、具体的に挙げていました。

同じことは、自作の金魚に1行足すだけで起きました。定義に「文書に出てくるファイルやフォルダは、GlobとReadで必ず開き、実在するか・中身が文書の説明と合うかを確かめる」と加えたC'では、2回とも金魚がCSVとひな形を開きました。その結果、ひな形の不在とCSV形式の違い、事業主貸の除外を指摘しています。費用はEGMのおよそ8〜9分の1でした。

開いた引き出しに形式の違う2種類の帳票と、ひな形があるはずの空の仕切りがあり、そばの金魚鉢の金魚(Claude Codeのサブエージェント)が参照先を確かめるイメージ
参照先を開いた金魚だけが、ファイルの中身から分かる欠陥に気づいた(イメージ)

注意:象が金魚の報告を書き写すと、象の知識が混ざることがある

EGMでは、レビュアーへの依頼文はどれも「追加の資料なし」で、ヒアリングの内容は一切漏れていませんでした(ログで確認)。ところが、象が読解テストの結果を日本語の段階別レポートに清書したとき、5番目の指摘に「顧問先から重複を指摘された過去があるため重大」という一文が加わっていました。これはヒアリングにある話で、レビュアーの原文(英語)にはありません。統合レポートでは別表に分けられていましたが、段階別のファイルでは混ざっていたことになります。公式ドキュメントにも、サブエージェントへの依頼文は本体のClaudeがまとめて書くとあります。金魚の意見かどうかを確かめたいときは、清書ではなく生の出力を見るのが確実です。

EGMなしで「金魚レビュー」を始めるには?

EGMを入れなくても、Claude Codeのサブエージェントを1つ作れば金魚レビューは始められます。読み取り専用のツールに絞り、CLAUDE.mdを読ませず、参照先を必ず開くように書くのがコツです。そのうえで、同じ会話でも「ヒアリングと食い違っていないか」を見直させると、今回の実測で最も取りこぼしが少ない組み合わせになります。

次のファイルを、プロジェクトの .claude/agents/goldfish-reviewer.md(全プロジェクトで使うなら ~/.claude/agents/)に置きます。今回のC'で使った定義そのものです。

.claude/agents/goldfish-reviewer.md
---
name: goldfish-reviewer
description: 会話の経緯を知らない第三者として、指定された文書と、その文書が参照するファイルだけを読んでレビューする。設計書・手順書・契約書ドラフトの見直しに使う。
tools: Read, Grep, Glob
model: inherit
omitClaudeMd: true
---

あなたは、この文書を初めて読む第三者のレビュアーです。渡されるのは文書のパスだけで、作成の経緯や口頭の前提は知りません。

- 文書と、文書が参照しているファイルだけを読む
- 文書に出てくるファイルやフォルダは、Glob と Read で必ず開き、実在するか・中身が文書の説明と合うかを確かめる
- 「この文書だけを渡された担当者が、迷わず同じものを作れるか」を基準に、書かれていない前提・曖昧な定義・矛盾・参照先の誤り・失敗時の扱い・完了の基準の欠けを指摘する
- 指摘は重要な順に、該当箇所(見出し)、なぜ問題か、どう直すかを1件ずつ書く
- 良い点の列挙やお世辞は書かない
- ファイルは変更しない

使うときは、文書を作った会話のなかで次のように頼みます。経緯を依頼文に書かないよう、文書のパスだけを渡すのがポイントです。今回の4回では、Claudeが自分で書いた依頼文にヒアリングの内容は入っていませんでした。

プロンプト例
goldfish-reviewer サブエージェントに 業務委託契約書_案.md のレビューを依頼してください。
渡すのはファイルのパスだけにして、作成の経緯は伝えないでください。
返ってきた指摘を要約せずにそのまま示し、そのあとで、私たちの打ち合わせ内容と食い違う点があれば別に挙げてください。

当研究所の見解では、この組み合わせは開発の設計書より、士業や管理部門の文書でこそ効きます。補助金申請の審査員も、新しく入った職員も、契約書を受け取る相手方も、作成の経緯を知らない「金魚」だからです。たとえば次のような場面です。

金魚レビューが向く文書の例

  • 補助金・助成金の事業計画書:審査員は事業の背景を知らない。用語の説明不足や、数字の根拠の飛躍を拾わせる
  • 業務手順書・引き継ぎ書:新人が手順だけで作業を再現できるかを確かめる
  • 契約書・規程の改定案:交渉の経緯を知らない読み手に、解釈が割れる条項を探させる
  • 顧問先への説明資料:前提知識のない経営者に通じるかを確かめる

もっと手軽に試すなら、Rensin氏の読解テストをそのまま使えます。新しい会話で「この文書と、文書が参照しているファイルを読んで、何をしようとしているのかを説明して」と頼み、返ってきた説明と自分の意図を比べます。今回EGMの読解テストは、設計書を「担当者が確認したあとで自動送付する」と読みました。矛盾した2つの文を、読み手が勝手につなげてしまったわけです。このように、言い換えのずれがそのまま直す場所になります。CLAUDE.mdとスキルの使い分けはCLAUDE.mdとskillsの使い分けガイド、Claude Codeそのものの始め方はClaude Codeとは(入門ガイド)で解説しています。

EGMの費用と注意点、向かない場面は?

EGMは丁寧なぶん重く、今回は新しい会話での見直しの約14倍の費用と約7倍の時間がかかりました。EGM自身のFAQも、小さく明確な変更には見合わないと書いています。Googleが正式にサポートする製品ではなく、公開から日も浅いので、重要な設計に絞って使うのが現実的です。

注意点を整理します。

1

費用と時間

45行の設計書1本で、サブエージェント9体・約0.82ドル・約4分でした。公式ドキュメントのとおり、サブエージェントの利用も本体と同じ利用枠に数えられます。長い設計書や、確認しながら進める実行方法では、さらに増えます。

2

小さな修正には使わない

READMEは「小さく明確なバグ修正には普段の流れを使う」としています。FAQも、手順を最後まで回しただけでは生産性が上がった証明にならないとし、自分の課題で時間・有用な指摘・手戻りを比べるよう勧めています。

3

指摘の多くは採用しない前提

EGMは意図して多めに指摘を出し、採否は人が決める設計です。今回も、統合レポート自体が「送付の承認の仕組みは、自動送付をやめれば不要」と、レビュアーの指摘の一部を見送っていました。

4

データはClaude Codeの設定のもとで扱われる

EGMは独自のサーバーやテレメトリを持たず、文書はふだん使っているClaude Codeの規約と設定のもとで処理されます。顧問先の情報を含む文書を読ませる前に、マイナンバーなどを消し、必要なファイルだけを渡すのは、EGMを使わない場合と同じです。

5

Claude Code以外での動作は検証途中

EGMの対応表(docs/harnesses.md)によれば、自動テストを通過しているのはAntigravity・Claude Code・Codexです。Claude Coworkでは、インストールはできるものの検証に課題が残っています(10月29日時点)。

今回の実測にも限界があります。題材は設計書1本、モデルはSonnet 5.5のみで、各方法は1〜3回、EGMは1回です。欠陥は当研究所が意図して仕込んだもので、判定も当研究所が付けました。また、今回の象には「前回あなたが書いた」と伝えただけで、実際に何時間も議論して自分で書いたわけではありません。長い議論のあとの見直しでは、思い込みが強まって結果が変わる可能性があります。

「Googleによれば、エージェントが一度で直せる小さな修正には見合わない。小さな変更では、この計画とレビューのすべてが作業を遅くするだけだからだ」

"Google says it isn't worth it for a small fix your agent can do in one go because on small changes, all this planning and reviewing just slows you down."

AI LABS(YouTube)— EGM: Google's New Way To Use Claude Code Is Insane 14:33

Rensin氏はエッセイで「判断を機械に委ねる過ちを犯してはいけない」("Do not make the mistake of outsourcing your judgment to the machine.")とも書いています。象も金魚も、指摘を出すところまでが仕事です。Claude Codeに作らせたものを確かめる考え方はClaude Codeの検証ループ、コードのレビュー機能についてはClaude Code コードレビューの使い方でも扱っています。

まとめ

この記事のまとめ

  • EGMは、Googleが2026年10月27日にv0.1.0を公開したオープンソースのプラグイン。経緯を知るAI(象)が書き、会話履歴を持たないサブエージェント(金魚)が見直し、人が採否を決める。Google公式のサポート製品ではない
  • Claude Codeでは claude plugin install egm@egm で入れ、/egm:egm-review で5段階のレビューを回せる。v2.1.271以降が必要
  • 欠陥10個の設計書で実測すると、ヒアリングを持つ同じ会話が9.5〜10点、新しい会話が7点、EGMが10点(金魚の指摘だけなら8点)。見つけたものの種類が違った
  • 金魚は会話の中にしかない事情を指摘できない。一方で、初めて読む人がつまずく点を拾い、参照先を開いた回だけがファイルの中の欠陥に気づいた
  • 手軽に始めるなら、読み取り専用で参照先を必ず開く金魚サブエージェントと、同じ会話での要件照合を組み合わせる。EGMは費用と時間が1桁多いので、重要な設計に絞る
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よくある質問

EGM(Elephant-Goldfish Model)とは何ですか?

EGMは、GoogleのDave Rensin氏のチームが社内で使ってきた設計レビューの手法と、それを実装したオープンソースのプラグインです。プロジェクトの経緯を知るAI(象)が仕様を書き、会話履歴を持たない新しいサブエージェント(金魚)が文書と参照ファイルだけを読んで抜けを探し、人が採否を決めます。Apache 2.0で公開され、v0.1.0は2026年10月27日です。Google公式のサポート製品ではありません。

Claude CodeにEGMを入れるにはどうすればいいですか?

ターミナルで claude plugin marketplace add google/elephant-goldfish-model を実行し、続けて claude plugin install egm@egm を実行します。新しいセッションを開き、/egm:egm-review 設計書.md のように /egm: を付けて呼びます。Claude Code v2.1.271以降が必要です(レビュアーが使う omitClaudeMd のため)。試すだけなら claude --plugin-dir で、そのセッションにだけ読み込めます。

Claude Codeに自分の文書をレビューさせるなら、同じ会話と新しい会話のどちらがいいですか?

当研究所の実測(2026年10月・Sonnet 5.5・設計書1本)では、両方を使うのが最もよい結果でした。ヒアリング内容を会話に持つ同じセッションは要件との食い違いに強く、前提を知らない新しい会話は「文書だけでは分からない点」に強く、見つけるものが違いました。会話の中にしかない事情は、新しい会話では原理的に指摘できません。

Claude Codeのサブエージェントで第三者レビュー役を作るには?

.claude/agents/ に Markdown ファイルを置き、先頭の設定で tools を Read, Grep, Glob に絞り、omitClaudeMd: true を指定します(v2.1.271以降)。サブエージェントは会話履歴を見ずに始まります。本文には「文書に出てくるファイルは必ず開いて実在を確かめる」と書くと、参照先の誤りまで拾えました。依頼時は経緯を書かず、文書のパスだけを渡します。

EGMのレビューにはどのくらいの費用と時間がかかりますか?

当研究所の実測では、45行の設計書1本に対する5段階のレビューで、サブエージェント9体が動き、約3分54秒、APIの定価換算で約0.82ドル(1ドル=157円で約128円)でした。ProやMaxでは利用枠の消費として効きます。同じ文書を新しい会話で見直すと約0.06ドル・約30秒だったので、重要な設計に絞って使うのが現実的です。

参考資料・出典

  1. GitHubgoogle/elephant-goldfish-model(README・Release v0.1.0)
    Google(Dave Rensin氏のチーム) / GitHub / 2026-10-27

    象・金魚・あなたの役割、Claude Codeへのインストール方法、7つのスキル、非公式製品である旨、Apache 2.0

  2. 公式ブログ・記事Elephants, Goldfish and the New Golden Age of Software Engineering
    Dave Rensin(Google。EGMの提唱者) / Medium / 2026-04-28

    象と金魚の定義、Comprehension TestとCritic Reviewの手順、「約30%が非常に価値がある」、2026-10-21のオープンソース化の追記

  3. 公式ドキュメントElephant-Goldfish Model(egm.dev)
    Google / egm.dev / 2026-10-29

    「Thousands of Google engineers use this open-source plugin」という説明、金魚は仕様の下書きと実際のソースだけを読むという定義

  4. 公式ドキュメントClaude Code integration(docs/claude.md)
    Google / GitHub / 2026-10-29

    v2.1.271以降の要件、レビュアーの定義(Read/Grep/Glob・omitClaudeMd)、ヘッドレス実行時の読み取り許可、agents/フォルダの警告

  5. 公式ドキュメントTesting(Harness Test Record)・FAQ・Data handling
    Google / GitHub / 2026-10-22

    Claude Code 2.1.308での検証結果、小さな修正には見合わないというFAQ、テレメトリを持たずデータはホストの規約で扱われる点

  6. 公式ドキュメントCreate custom subagents
    Anthropic / Claude Code Docs / 2026-10-29

    サブエージェントは会話履歴を見ずに始まる、委任メッセージは親が書く、omitClaudeMd(v2.1.271)、入れ子は3層まで、利用枠は本体と共通

  7. 公式ドキュメントPlugin loading
    Anthropic / Claude Code Docs / 2026-10-29

    --plugin-dir で読み込んだプラグインはそのセッションだけ有効になる点

  8. 動画EGM: Google's New Way To Use Claude Code Is Insane
    AI LABS(YouTube・AIツール解説チャンネル) / YouTube / 2026-10-25

    16万再生の解説動画。金魚にチャットを見せない理由(3:49)、小さな修正には向かないという注意(14:33)

  9. GitHubanthropics/claude-code Releases(v2.1.312)
    Anthropic / GitHub / 2026-10-27

    当研究所の検証時のClaude Codeのバージョン

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